サッカー日本代表が2034年W杯で勝ち上がるために #1 日本は運を語るレベルに達していない②

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第二章 日本が絶対に勝てない国はあるのか?絶対に勝てる国はあるのか?

前章では、今大会の日本を「スウェーデンと引き分けた国」と評した。厳しい言い方をしたが、ここからは日本を褒める側に回りたい。

日本が絶対に勝てない国というのは、今の世界には、限りなく少なくなっている。むしろ、すべての国に勝てる可能性があると言っていい。極端な話をしよう。もし5回対戦して1回勝てばクリア、というルールで世界中のすべての国と順番に戦うとしたら、日本はおそらく全クリできる。ブラジルにも、アルゼンチンにも、フランスにも、5回に1回なら勝てる目がある。現代のサッカーは、しっかり守ってカウンターを仕留められれば、どんな相手ともある程度は渡り合える競技になっている。

ここで、三笘薫の存在について触れないわけにはいかない。彼は今大会、メンバーにすら入れなかった。大会の1カ月前、プレミアリーグの試合で左ハムストリングを痛め、手術を受けることになり、森保一監督は苦渋の決断で選外とした。三笘は、1人でサッカーの試合の流れを変えることができる、数少ない日本人選手だ。彼がボールを持った瞬間、相手チームは彼専用の対策を敷かなければならなくなる。世界的なスター選手というわけではなく、日本人が思うほど世界中に名前が知られているわけでもないが、試合における彼の価値は間違いなく高い。前回大会、決勝トーナメント進出を決めたスペイン戦でのアシストは、ゴールラインぎりぎりの1ミリで語り継がれる場面になった。今年3月のイングランド戦でも、決勝ゴールを決めている。そういう選手が、大会直前の負傷でまるごと欠けた。これは、かなり不幸なことだったと言えるだろう。彼がいれば、もう少し勝ち進むことができたかもしれない。だが同時に、これも冷静に受け止めるべきことがある。1人の選手の不在を嘆けるということ自体、その1人がいれば結果が変わるかもしれない、というレベルの戦いを日本がしているということでもある。つまり、僅差の勝負ができる力があるということだ。

しかし、この話には裏がある。日本がすべての国に勝てる可能性があるのと同様に、日本はすべての国に負ける可能性がある、と考えるべきだ。5回やって5回連続で確実に勝てる、と言い切れる国は、今の日本には存在しない。日本が格上と呼ばれる国を倒すことができるように、ほとんどの国が日本を倒すポテンシャルを持っている。それは、実際に何度も目にしてきた光景のはずだ。

そして、これは日本だけの話ではない。日本より明確に格上とされるスペインのような国でさえ、同じことが言える。サッカーの原則がこれだけ世界に周知された今、どのような国であっても、ある程度サッカーや運動能力に優れた11人を集めることができれば、それなりに戦えるチームを作れる時代になっている。ワールドカップの舞台でも、時折とんでもない大差がついた試合を目にすることがあるが、サッカーというスポーツをある程度知っている人なら分かるはずだ。一度試合が崩壊すると、そこからはただ崩れていくだけの絶望が待っている、ということを。

ここで、2022年カタール大会の決勝トーナメント1回戦、ポルトガル対スイスの試合を例に出したい。スコアだけを見れば6対1という、圧倒的な大差がついた試合だった。だが、実際の試合内容を振り返ると、両チームの実力差がそこまであったとは言い難い。ボール支配率はポルトガルが52パーセント、スイスが48パーセントと、ほぼ互角。シュート数もポルトガルの14本に対してスイスは9本と、大差というほどの差ではない。前半は0対0で終えている。試合が動いたのは後半に入ってからで、後半17分にゴンサロ・ラモスが先制すると、そこから一気にポルトガルのペースになり、雪崩を打つように失点を重ねてしまった。野球のように点差が広がりにくい競技とはいえ、サッカーでも一度崩れたチームは、恐ろしいスピードで崩壊が進んでいく。あの試合のスコアだけを見て、ポルトガルとスイスにあれほどの実力差があった、と結論づけるのは早計だ。

今大会でも、似たような光景がいくつもあった。グループFで日本と同組だったオランダは、無敗の1位通過という結果を出しながら、決勝トーナメント1回戦でモロッコと対戦し、後半アディショナルタイムに追いつかれ、延長でも決着がつかず、最後はPK戦の末に敗れている。同じ日、ドイツもパラグアイ相手にPK戦で敗れた。欧州の強豪が、格下と見られていた相手に、内容では大きく崩れることなく、それでも敗れていく。組み合わせの妙、試合当日のコンディション、審判の判定、そういった小さな要素の積み重ねが、結果を大きく左右するのが、このワールドカップという舞台なのだ。

さらに言えば、開催国であるアメリカ、カナダ、メキシコの3カ国は、いずれもベスト16で姿を消している。開催国という大きなアドバンテージを持ちながら、である。メキシコにいたってはグループステージを無敗、無失点で勝ち上がりながら、決勝トーナメント2回戦でイングランドに2対3で敗れた。実力と結果が、必ずしも一致しない。それがサッカーというスポーツの残酷さであり、面白さでもある。

ここまでの話をまとめると、こういうことになる。日本には、絶対に勝てない国はほとんど存在しない。同時に、絶対に勝てる国もほとんど存在しない。今の日本は、世界のほとんどの国と、渡り合える。これは間違いなく誇っていい実力であり、この本のシリーズを通して私が繰り返し伝えたいことの一つでもある。

だが、勝つ可能性がある、ということと、優勝できる、ということの間には、途方もない距離がある。優勝するためには、その戦いを、大会期間中、何度も何度も勝ち続けなければならない。1回や2回、格上を倒すことができても、それをトーナメントの最後まで維持し続けることは、まったく別次元の話だ。日本が今後、本当の意味で世界の頂点を目指すのであれば、この「勝てるかもしれない実力」を「格下には確実に勝つ、優勝候補相手にも五分五分の実力」に変えていき、さらに「勝ち続けられる実力」に変えていくかが、最大の課題になる。

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