【サッカー日本代表が2034年W杯で勝ち上がるために】#2 日本はスイスを目指すべきなのか④

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第四章 能力の差。実績の差。

ここまで、スイスというチームの戦術や戦いぶりについて語ってきたが、この章では、そのチームを構成する選手たち一人ひとりに、じっくりと光を当てていきたい。スイス好きの私でなくても、名前くらいは聞いたことがある選手ばかりのはずだ。だからこそ、しっかりと語る価値がある。

まず、このチームの心臓、グラニト・ジャカから始めよう。ジャカは、スイス代表史上最多となる135キャップを誇る、現在のチームの主将だ。コソボにルーツを持つ両親のもとに生まれ、FCバーゼルでキャリアをスタートさせると、ボルシア・メンヒェングラートバッハを経て、2016年にアーセナルへ移籍。プレミアリーグでキャプテンも務め、FAカップを2度制している。2023年には、バイエル・レバークーゼンへ移籍すると、シャビ・アロンソ監督のもとで、クラブ史上初となるブンデスリーガ制覇、そして国内無敗という偉業に大きく貢献した。DFBポカール決勝では、自ら決勝ゴールを決めて2冠を達成している。2025年夏には、プレミアリーグに昇格したサンダーランドへ移籍し、その勝者のメンタリティをクラブに注入し続けている。精緻な左足のロングパスと、中盤での鬼のような守備強度。このジャカという選手が、スイス代表の心臓部で、チーム全体にリーダーシップを注ぎ込んでいる。

次に、守備の要、マヌエル・アカンジ。ナイジェリア人の父とスイス人の母のもとに生まれたアカンジは、地元FCヴィンタートゥールからFCバーゼル、ボルシア・ドルトムントを経て、2022年にマンチェスター・シティへ電撃移籍。移籍初年度から、あの伝説的な3冠達成に大きく貢献した。そして今夏、セリエAの名門インテル・ミラノへの移籍が決まっている。プレミアリーグの絶対王者で主力を張り、次はセリエAの強豪で新たな挑戦に臨む。この経歴だけで、彼がどれほど世界的に高く評価されているセンターバックかが分かるはずだ。

ゴールキーパーのポジションでは、世代交代が見事に進んでいる。長年スイスの守護神を務めてきたヤン・ゾマーは、2024年のEUROを最後に代表を引退したが、クラブレベルでは2023年からインテル・ミラノに所属し、2023−24シーズンのセリエA制覇に貢献。UEFAチャンピオンズリーグでは、10試合以上出場したGKの中で史上最高となる65パーセントというクリーンシート率を記録するなど、世界屈指の守護神として君臨し続けてきた。そのゾマーからバトンを受け継いだのが、ボルシア・ドルトムントの正GK、グレゴール・コベルだ。今大会の欧州予選6試合で、わずか2失点という堅守を築き上げ、本大会でもコロンビア戦のPK戦でストップを決めるなど、まさに「スイス=名GK」という伝統を、確実に受け継いでいる。

そして、今大会最大の発見となった新世代の怪物、ヨハン・マンザンビ。彼はドイツ・ブンデスリーガのフライブルクに所属しており、実はそこで、日本代表MF鈴木唯人と同じチームでプレーしている選手だ。今大会、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で途中出場からわずか2分で強烈なボレーを叩き込むと、その後もう1点を追加し、2ゴールと1つのPK誘発を記録。あのシュートの速度は、英紙ガーディアンによれば時速127キロに達し、前回カタール大会の最速記録を大きく上回るものだった。わずか20歳にして、ラウンド32のアルジェリア戦でも先制点をアシストするなど、大会を通じてチームの核となりつつあった。惜しくも、ラウンド16のコロンビア戦を前に練習中の負傷でチームを離脱してしまったが、この大会でスイスに新しいスターが誕生したことは、間違いない事実だ。

さらに歴代で言えば、はじめにでも触れたジェルダン・シャキリのような、組織を突き抜ける個の力を持つ選手も、このチームの歴史には確かに存在してきた。

こうして並べてみると、正直なところ、日本人にどれだけ知られているかは分からないが、個々の選手で見れば、知名度、実績ともに、明らかにスイスの方が上だと言わざるを得ない。現時点で、ジャカ、アカンジ、コベルといった選手たちよりも世界的に評価されている選手は、残念ながら日本にはいない。この差は、間違いなく存在する。

ただし、私はここで、たどり着けない世界だとは思っていない。日本にも、日本史上最高レベルと言われるGK、鈴木ザイオンがいる。190センチ、93キロという恵まれた体格と、規格外の身体能力を持ち、2023年にはマンチェスター・ユナイテッドからのオファーも受けた逸材だ。現在はセリエAのパルマで、日本人として初めて正GKの座を掴んでいる。ゾマーからコベルへと受け継がれてきたスイスの守護神の系譜に、鈴木ザイオンがいつか肩を並べる日が来ても、決しておかしくはない。中盤には、佐野海舟のような、今大会でも守備の中心を担った選手がいる。ジャカが持つような絶対的な存在感には、まだ届かないかもしれない。だが、十分に可能性を秘めたプレイヤーであることは間違いない。

さて、ここで、もう少し具体的な比較をしてみたい。スイスの前線には、ブレール・エンボロという選手がいる。カメルーン出身で、スイス国籍を取得したこの選手は、かつてチームメイトの柿谷曜一朗から「化け物」と称されたほどの、恵まれた身体能力の持ち主だ。バーゼル、シャルケ、ボルシア・メンヒェングラートバッハ、モナコを渡り歩き、今大会もアルジェリア戦の決勝点を決めている。

では、問いたい。このエンボロは、日本のエース、上田綺世よりも、確実に優れていると言えるだろうか。私は、そうは思わない。上田は、現在オランダの名門フェイエノールトでゴールを重ね続けており、フィジカルの強さとゴール前での嗅覚は、世界のどのFWと比べても引けを取らない水準にある。同様に、スイスの前線に、前田大然よりも異常な身体能力を持つ選手がいるかと問われれば、私はここでも、断言はできない。前田の規格外のスピードと運動量は、世界的に見ても稀有なものだ。

つまり、こういうことだ。中盤の底から最終ラインにかけて、ジャカ、アカンジ、コベルと並ぶスイスの守備陣は、世界トップクラスと言っていいレベルにある。そこに、マンザンビのようなフレッシュな才能が加わった、完璧とも言える布陣だ。だが、前線の個々の選手を一人ずつ比較していくと、日本の選手たちも決して見劣りしない。全体のバランスと完成度で見れば、間違いなくスイスに分がある。しかし、局所的な比較であれば、日本にも十分な勝算が見出せる。

このスイスというチームを、日本が今後を見据える上での参考にすることは、大いにありだと私は思っている。守備の骨格をどう作るか、若い才能をどう組み込んでいくか、学ぶべき点は数多い。

ただし、ここで一つ、大きな警鐘を鳴らしておきたい。

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