【サッカー日本代表が2034年W杯で勝ち上がるために】#2 日本はスイスを目指すべきなのか②

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第二章 「スイスになら勝てた」

スイスがベスト8まで勝ち上がった一方で、日本はベスト32でブラジルに敗れて姿を消した。この二つの結果が並んだ瞬間、日本のサッカーファンの間から、判で押したように同じ言葉が聞こえてきた。スイスになら勝てた。日本もあっちの山に入っていれば、もっと上まで行けたはずだ。

10年以上スイスを見続けてきた人間として、この言葉には、はっきりと異を唱えたい。

まず、スイスというチームが、これまでどれほどの実績を積み上げてきたかを、丁寧に振り返る必要がある。2021年のEURO2020、決勝トーナメント1回戦。スイスの相手は、当時まさに世界王者だったフランスだった。2018年ロシア大会を制したばかりの、文字通り世界最強のチームである。試合は3対3の壮絶な打ち合いの末、PK戦にもつれ込み、スイスが5対4を制した。世界王者が、決勝トーナメントの初戦であっさりと姿を消す。あのフランスを倒したのが、スイスだったのだ。

それだけではない。2024年のEURO2024、決勝トーナメント1回戦。相手は、前回大会王者のイタリアだった。この試合、スイスは2対0の完勝を収めている。前回優勝国を、危なげなく叩きのめした。その後の準々決勝では、イングランドとの一戦を1対1からのPK戦の末に落としているが、あそこまで勝ち上がったこと自体が、このチームの地力の高さを物語っている。

世界王者だったフランスを倒し、前回覇者だったイタリアを叩きのめす。これだけの実績を、直近の主要国際大会で積み上げてきたチームが、スイスなのだ。

さらに言えば、今回のワールドカップ予選での戦いぶりにも触れておきたい。日本はグループステージ最終戦、スウェーデンと対戦し、スタメンを3人変更した状態で臨みながら、前田大然の先制ゴールのあと追いつかれ、1対1の引き分けに終わっている。決勝トーナメント進出はすでに視野に入っていたとはいえ、あのイサク、ギェケレシュ、エランガという強力な攻撃陣を擁するスウェーデンに対して、勝ち切ることができなかった。

一方のスイスは、この同じスウェーデンを相手に、ワールドカップ予選で2度対戦し、2度とも勝利している。アウェーで2対0、ホームでは4対1。いずれも圧倒的な勝ち方だった。同じ相手に対して、日本が引き分けるのがやっとだった試合を、スイスは危なげなく粉砕している。この一点だけを切り取っても、両者の間にある実力差は、決して小さなものではない。

そもそも、ヨーロッパという大陸で、これだけ安定してワールドカップ本大会に出場し続けているという事実そのものが、十分な強さの証明だと言っていい。人口わずか870万人ほどの小国でありながら、世界屈指の激戦区であるUEFA予選を、毎回のように勝ち抜いてくる。これは決して当たり前のことではない。

さて、これだけスイスを持ち上げる話を並べてきたが、ここで一つ、意外なことを言いたい。

そんな素晴らしい実績を積み上げてきたスイスに対して、スイスサッカーを愛してやまない私自身が、胸を張って言えることがある。日本は、スイスに勝つ可能性が十分にある、ということだ。

これまでさんざん、日本を下げてスイスを持ち上げるようなことばかり書いてきたので、意外に思われるかもしれない。だが、これは矛盾ではない。実力に大きな差があることと、勝てる可能性があることは、まったく別の話だ。

理由は、スイスというチームのプレースタイルにある。スイスは基本的に、ボールを支配して試合を進めるチームだ。今大会のモロッコ戦のように、相手にほとんどボールを持たせず、じっくりとゲームをコントロールしながら、隙を見て仕留める。この戦い方は、噛み合えば非常に強力だが、裏を返せば、相手がボールを持つことを許してしまえば、ペースを崩される可能性があるということでもある。

日本は、決してボール保持を苦手とするチームではない。むしろ近年は、しっかりとボールを握りながら試合を組み立てられるチームへと進化してきている。もし日本が、スイスにきちんとボールを持たせず、自分たちがボールを握る時間を作ることができたなら、そこに間違いなく、つけ入る隙が生まれる。実際、スイスがコロンビア戦で見せたように、相手にボール保持で真っ向から対抗されたとき、スイスの攻撃はどうしても手数が減り、こう着した展開になりやすい。あの試合、スイスは120分間、無得点に終わっている。

つまり、こういうことだ。フランスを倒し、イタリアを倒し、ワールドカップ予選でスウェーデンを圧倒してきたスイスは、間違いなく強い。だが、その強さは、相手にボールを持たせて自分たちのペースで戦えたときに、最も発揮される種類の強さだ。日本がその土俵に引きずり込まれず、自分たちのやり方でボールを握り続けることができれば、勝機は十分にある。

「スイスになら勝てた」という言葉が的外れなのは、その言葉を口にした人たちの多くが、スイスというチームの実績も、戦い方も、ろくに知らないまま、ただ「ベスト32で敗退した国」と「ベスト8まで勝ち上がった国」という結果の順位だけを見て、なんとなく言っているからだ。フランスを倒し、イタリアを倒してきたこのチームを、日本が本気で倒そうと思うなら、なんとなくの気持ちではなく、相手の強さと弱さを正確に理解した上で、明確な戦略を持って挑まなければならない。

私が言いたいのは、スイスは与しやすい相手だ、ということではない。むしろ逆だ。これほどの実績を持つ相手に対してもなお、日本には勝つための具体的な道筋がある、ということだ。「スイスになら勝てた」ではなく、「スイスにも、正しい戦い方をすれば、勝てる可能性がある」。この二つの言葉の間には、大きな隔たりがある。前者は結果だけを見た、根拠のない楽観だ。後者は、相手を正しく分析した上での、現実的な希望だ。

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